妄想(前半は・・・)
投稿者:四葉
2010/3/21(日) 15:01:14 No.3138
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仕事を終え、電車に乗り込もうと慌てて走ったが間に合わなかった。 仕方なく次の電車が来るのをホームのベンチで座って待っていると端に一人の女性が座っていた。 その彼女は口元をハンカチで覆い、気分が悪そうだった。 時折、頭を抱えている所をみると相当具合が良くなさそうな感じがした。 俺は、その彼女の傍に歩み寄り声を掛けた。 『あの…大丈夫ですか?駅員呼びましょうか??』 「い、いえ、大丈夫です…少し休めば良くなると思うんで……」 大丈夫だと言われ、俺は到着した電車に乗り込んだ。 走り出す電車の中で、彼女の姿が見えなくなるまで俺は目で追いかけた。 電車に揺られる俺は彼女の事が無性に気になっていた。 そして俺は、そこから2駅着いた所で電車から降り、下り電車へ乗り直し彼女と出会った駅に戻る事にした。 駅に再び戻ってくると、先程と同じベンチに座ったままの彼女の後姿が見えた。 自販機で水を買い、彼女の隣へ座った。 『これどうぞ。こんな場所で幾ら休んでも悪くなる一方ですよ?』 「あなたはさっきの……」 『どなたか家の方に迎えに来て貰えないんですか?』 「…………私、1人ですから」 『そうですか…家〜家は近いんですか?』 「家ですか?此処から歩いて10分程で…」 『そっか。じゃ、行きましょう。途中まで送りますから』 「だ、大丈夫です。ひ、1人で帰れますから…ご心配掛けてすいませんでした」 彼女はベンチから立ち上がり足元をフラ付かせながら改札口に向かい歩き出した。 心配だった俺は彼女から少し離れた位置で後を追い改札口を出た。 駅の外を見ると急な雨が降り出していた。 『何だ!?凄い雨が降ってるよ』 しかし彼女は大雨を気にする事なくフラフラと駅から歩いて行ってしまった。 『ちょ、ちょっと!あの人、傘も持たずにっ!!』 慌てて俺は売店で傘を買い、彼女の元へ走りだした。 『こんな雨の中、傘も差さずに歩くなんて何を考えているんですか!』 雨でびしょ濡れになる彼女の視線は虚ろだった。 俺は小さなビニール傘を彼女に差し、雨で冷えた彼女の肩を抱き込んだ。 『近くなんでしょ?家…帰って早く着替えないと悪化しますよ?』 「あ、ありがとう御座います……」 足をもたつかせながら歩く彼女へ俺は肩を貸しながら誘導する。 「此処です…此処の4階です……」 『此処?4階ですね、わかった』 このまま彼女を連れエレベーターに乗り込こんだ。 彼女の吐く息は苦しそうで、顔を赤らめ頬が熱かった。 『4階に着きましたよ。何号室?』 「403…」 彼女の言う403号室の前に着き、彼女へ鍵を取り出させた。 部屋の鍵を借り、俺は鍵を開けた。 そして、仄かに甘い香りが漂う家の中へ俺と彼女は入った。 綺麗に片付けられている1Rの小さな部屋。 彼女の濡れたコートを脱がせベッドに一旦座らせた。 タオルを適当に探し、彼女の髪を急いで拭いてあげた。 『えっと…まずは濡れた服を着替えて薬か!』 『何が何処にあるのかさっぱりだな…』 俺は手当たり次第にタンスや引き出しを開いた。 そして、それらしい着替えを見付け彼女へ手渡した。 『早くそれに着替えて。あ、俺は後ろ向いているから安心して』 俺は彼女に背を向けながら、次は薬を探し出した。 『あった、あった。市販のだけど飲まないよりは増しだろ』 『あ!着替えは済んだ?』 しかし彼女からは返事が無い。 『ごめん、少し振り向くよ?良いよね??』 それでも全く返事を返さない彼女。 そして俺がゆっくりと体を振り向かせると、彼女は着替え途中でベッドに倒れ込んでいた。 上下共に下着姿のままで息を更に荒くさせ項垂れている彼女。 慌てて彼女の傍へ駆け寄り、彼女の背を起こすと体全体が熱かった。 俺は彼女へ直ぐに上着を着せ、ズボンを履かせた。 布団を掛け、薬と水を用意し彼女へ飲ませた。 薬を喉へ流し込むと暫くして彼女は眠りについた。 いまだに外は止む気配のない雨が降り続いている。 彼女の額に乗せた冷えたタオルを換え、流した汗を拭き取りながら看病を続ける。 そして俺はいつの間にか壁に寄り掛かりながら眠ってしまった。
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